3Dプリントの積層痕を消す方法|出力品を製品レベルに仕上げる

3Dプリンタで出力したものを手に取って、「形はできているのに、製品には見えない」と感じたことはないでしょうか。

原因のほとんどは積層痕です。造形方式を問わず、3Dプリントには層を積み重ねた跡が残ります。この縞模様がある限り、どれだけ精密なモデルでも「出力品」に見えてしまいます。

今回は積層痕を消す方法と、どこまで自分でやれてどこから外注すべきかを解説します。

目次

積層痕はなぜ消しにくいのか

積層痕は、塗装を厚く乗せれば隠れるというものではありません。

塗料は下地の凹凸に沿って乗るため、縞を残したまま表面だけが塗られた状態になります。むしろ光沢のある塗装をすると、光が縞に沿って反射するため、塗る前より目立つことすらあります。

消すには、塗装の前に物理的に表面を平らにする工程が必要です。ここを飛ばすと何度塗り直しても同じ結果になります。

3Dプリント造形物

基本の手順

素材や要求される品質によって変わりますが、基本は次の流れです。

  1. サポート跡の処理:サポート材を外した跡の凸凹をナイフやヤスリで削る
  2. 粗研磨:150〜400番程度で積層痕の山を削り落とす
  3. サーフェイサー:溶きパテやサーフェイサーで谷を埋める
  4. 中研磨:400〜800番で平滑にする
  5. サーフェイサー(2回目以降):残った谷を埋める
  6. 仕上げ研磨:1000番以上で最終調整
  7. 塗装:ベース塗装、仕上げ塗装

ポイントは、3〜6を1回で終わらせようとしないことです。削って埋めて、また削る。この往復の回数が仕上がりを決めます。曲面や入り組んだ形状では、この工程が特に効きます。

光を斜めから当てて確認すると、まだ残っている谷が見えます。正面からの目視では分かりません。

素材によって手順が変わる

FDM(熱溶解積層)

積層痕が最も大きく出る方式です。層の段差がはっきりしているため、研磨の工程が長くなります。ABSであれば溶剤で表面を溶かして平滑化する方法もありますが、寸法が変わるため精度が必要な部品には使えません。

光造形(SLA・DLP)/UVレジン

積層ピッチが細かいため積層痕は目立ちにくいものの、完全には消えません。またレジンは硬く脆いため、研磨で角が欠けやすい特性があります。未硬化のレジンが残っていると塗装が密着しないため、洗浄と二次硬化を確実に行う必要があります。

粉末焼結(SLS)/ナイロン

表面がざらついた質感になります。積層痕というより粒状の凹凸で、これを平滑にするにはサーフェイサーを厚めに使うことになります。素材が塗料を吸うため、下地処理の回数が増えます。

素材別の造形例

エムズでは、素材に応じた下地処理を行ったうえで塗装しています。FRP、UVレジン、ABS、金属、木材、発泡体、石材まで、素材を選ばずに均一な質感に仕上げられるのは、この下地の作り分けによるものです。

どこまで自分でやれるか

自分でやって成立する範囲

  • 社内検討用のモックアップ
  • 形状確認が目的のもの
  • 単色で、艶を抑えた仕上げ

外注を検討したほうがいい範囲

  • 展示会やプレゼンで人に見せるもの:光沢がある、人が近くで見る、という条件が揃うと、下地の甘さが確実に露見します
  • 鏡面・メタリックなど反射する仕上げ:反射する仕上げは下地の凹凸を増幅します。銀鏡塗装やメッキ調にする場合、下地の精度が仕上がりのすべてを決めます
  • 大型のもの:面積が広いほど研磨の手間は非線形に増えます
  • 数が必要なもの:1個なら根性で仕上がっても、10個揃えるのは別の話です
  • 納期が決まっているもの:研磨と乾燥の往復は時間がかかります。焦ると仕上がりに出ます

判断の目安は、「この仕上がりでお客様に見せられるか」です。社内で回るものは自分で、外に出るものは外注、と切り分けるのが現実的です。

積層痕を消した先にできること

下地さえ作れれば、3Dプリント出力品は素材の制約から解放されます。

本物の素材に見せる

金属、石、木材といった質感を後から与えられます。軽い樹脂で造形して、見た目は重厚な金属、という組み合わせが可能になります。

造形塗装で仕上げた作品

鏡面にする

銀鏡塗装を組み合わせれば、樹脂の出力品を鏡面に仕上げられます。3Dプリントでしか作れない複雑な形状を、鏡のように反射する物体にできます。

大型化する

エムズの3Dプリンタは最大550mmまで一体で出力できますが、それを超えるサイズは分割して造形し、接合して仕上げます。接合部を含めて下地処理と塗装を行うため、継ぎ目の分からない一体物として仕上がります。

外注するときに用意するもの

3Dデータがある場合

STL・STEPなどのデータをお預かりすれば、造形から塗装まで一貫して対応できます。

データがない場合

手書きのラフや写真のイメージからでも製作は可能です。「図面はないが、こういうものを作りたい」という段階からご相談いただけます。

現物がある場合

すでに出力済みのものをお持ちいただき、仕上げだけを依頼することもできます。素材と造形方式をお知らせください。

あわせて、最終的にどう見せたいかをお伝えいただけると精度が上がります。展示会のブースで見せるのか、手に取ってもらうのか、写真撮影に使うのか。見られ方によって、かけるべき工程が変わります。

よくある質問

Q. 自分で塗装したものを直してもらえますか?
A. 状態によります。既存の塗膜を剥がす工程が入るため、最初から仕上げるより手間がかかる場合があります。現物を確認させてください。

Q. 積層痕は完全に消えますか?
A. 要求される品質次第です。鏡面仕上げのように反射で下地が露見する条件でも消せるレベルまで持っていけます。ただし工程数と時間が変わるため、必要な水準を事前にすり合わせます。

Q. 大きいものも対応できますか?
A. 最大550mmまでは一体で造形できます。それを超える場合は分割して接合します。継ぎ目が分からない状態まで仕上げます。

Q. 素材は何に対応していますか?
A. FRP、UVレジン、ABS、各種金属、木材、発泡体、石材などに対応しています。特殊な下地処理により、素材を問わず均一な質感に仕上げられます。

まとめ|3Dプリント品の仕上げはエムズへ

積層痕を消す作業は、削って埋めての繰り返しです。地味で時間のかかる工程ですが、ここが仕上がりのすべてを決めます。

エムズでは、造形の段階から最終的な仕上がりを逆算して設計しています。3Dプリント出力品を本物の素材のように見せる、鏡面に仕上げる、大型のオブジェとして成立させる。「この形状をこう見せたい」という段階からご相談ください。

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