樹脂の加飾技術まとめ|塗装・フィルム・めっき・成形の使い分け

製品の形が決まったあと、必ず出てくる問いがあります。この表面をどうするか、です。

図面の上では同じ形でも、つや消しの黒と鏡のような銀では、まったく別の製品に見えます。木のように見せることも、石のように見せることも、触れた瞬間に高級だと感じさせることもできます。そしてその手段は、ひとつではありません。

樹脂の表面に質感を与える技術は、まとめて「加飾」と呼ばれます。成形と同時に行うもの、フィルムを貼るもの、金属の膜をつくるもの、塗るもの。それぞれに得意な数量と形状があり、選び方を間違えると、金額も日程も合わなくなります。

この記事では、加飾の全体像を整理したうえで、数が少ないとき、形が複雑なときに何が残るのかを見ていきます。量産を前提にした解説は多くありますが、試作や一点ものの話は意外と書かれていません。

素材サンプルを手に取って質感を見比べている様子
目次

加飾とは何か|「形はできた、あとは質感」の工程

加飾とは、製品の表面に意匠性や機能性を与える加工の総称です。装飾と訳されることもありますが、見た目だけの話ではありません。

加飾が担っているのは、おおむね次の3つです。

  • 意匠:色、つや、質感、柄。ブランドの世界観を物理的に成立させる部分
  • 機能:傷つきにくさ、指紋の付きにくさ、手触り、抗菌性
  • 保護:下地の素材を紫外線や摩耗から守る

ひとつの製品に対して、この3つが同時に求められることがほとんどです。「高級感のある黒で、指紋が目立たず、こすれても剥がれない」といった要望は、どれかひとつの技術だけでは満たせないことがあります。

加飾技術は大きく4つに分かれる

技術の数は多いのですが、どの工程で質感をつくるかで整理すると見通しが良くなります。

1. 成形と同時につくる

金型の側に質感を持たせる方法です。金型の内面に細かな凹凸を彫っておき、成形した時点で表面に模様が出るようにします。革のような目や、細かな梨地が代表的です。フィルムを金型の中に入れて、成形と同時に転写してしまう方法もあります。

工程が増えないため、数が多いほど1個あたりは安くなります。一方で、金型をつくらなければ始まりません。

2. フィルムを貼る・転写する

できあがった製品にフィルムを貼る、あるいは熱や圧力で柄を移す方法です。印刷された柄をそのまま載せられるため、木目や幾何学模様のように情報量の多い意匠に向きます。

平面や、曲がりの少ない面が得意です。深い絞りや複雑な凹凸があると、フィルムが追従しきれません。

3. 金属の膜をつくる(めっき・蒸着)

金属の被膜を表面につくる方法です。電気を使って金属を析出させるめっき、真空中で金属を蒸発させて付着させる蒸着やスパッタリングなどがあります。

金属そのものの質感が得られる反面、槽や真空装置に入る大きさでなければ処理できません。大型のものや、形が極端に入り組んだものでは選択肢から外れることがあります。

4. 塗る

塗料を吹き付けて膜をつくる方法です。この記事の後半で詳しく扱いますが、形状をほとんど選ばず、1個からでも成立するのが最大の特徴です。

技術別の比較

分類得意な数量形状の自由度初期費用向いている場面
成形時(シボ・インモールド)多い(数千〜)金型次第金型が必要で高い量産が決まっている部品
フィルム(貼る・転写する)中〜多い平面・緩い曲面版や型が必要情報量の多い柄を広い面に
めっき・蒸着中〜多い装置に入る大きさまで中金属そのものの質感が要るとき
塗装1個からほぼ自由低い試作、少量、複雑形状、大型

この表で見ていただきたいのは、数量と形状の2列です。この2つで、使える技術はかなり絞られます。

数が少ないとき、形が複雑なときに塗装が残る理由

金型を起こす方法は、数が出るほど強くなります。逆に言えば、数が出ないうちは成立しません。試作段階、展示会用の一点もの、受注生産の什器といった案件では、金型という選択肢そのものが消えます。

フィルムは、面が素直であることが前提になります。有機的な曲面や、深い凹凸のある造形物では、しわや伸びが出ます。

めっきや蒸着は、装置の大きさという物理的な上限があります。大型のオブジェや什器では、槽に入らないという理由だけで検討から外れることがあります。

残るのが塗装です。塗装は、対象に合わせて人が工程を組めるという点で他と性格が違います。下地の処理を素材ごとに変えられるので、ひとつの製品の中に樹脂と金属と木が混ざっていても、仕上げの質感を揃えられます。1個だけつくることもできます。

弱点もあります。1個あたりの工数は他の方法より大きくなるため、数が増えるほど不利になります。何万個も同じものをつくるなら、金型側で解決したほうが単価は下がります。

塗装用スプレーガンのクローズアップ

塗装でつくれる質感

塗装と一口に言っても、できることの幅は広く、技術ごとに別の名前がついています。

金属に見せる。 鏡のような反射をつくる銀鏡塗装や、金属粉を含む塗料による金属調の仕上げがあります。樹脂のままで金属の見た目を得られるため、軽さを保ったまま質感だけ変えられます。

柄を載せる。 水に浮かべたフィルムの柄を立体物に転写する水圧転写という方法があります。カーボン調、木目調、石目調といった柄を、曲面を含む立体に回り込ませられます。

質感をつくる。 つやを落とす、細かな凹凸を与える、柔らかい手触りにする、時間を経たように見せる。意匠塗装と呼ばれる領域です。

機能を足す。 傷つきにくくする、指紋を目立ちにくくする、抗菌性を持たせる。見た目を変えずに性能だけ足せるのが塗装の利点です。

株式会社エムズは、この塗装側の技術を扱っています。対応素材としてFRP、各種樹脂、金属、木材、ガラス、カーボン、発泡体などを挙げており、素材をまたいで仕上げを揃えることを前提にした体制です。調色については、既存サンプルへのマッチングと、抽象的なイメージからの新規開発の両方に対応するとしています。

選ぶときの判断順序

技術の一覧を眺めても決まりません。順番に絞るほうが早く着きます。

1. 数量を決める。 何個つくるのか。将来どこまで増えるのか。ここで金型を起こす方法が残るかどうかが決まります。

2. 形状を見る。 平面か、曲面か、入り組んでいるか。大きさは装置に入るか。フィルムとめっきは、ここで外れることがあります。

3. 求める質感を言葉にする。 金属に見せたいのか、柄を載せたいのか、手触りを変えたいのか。複数あるなら優先順位をつけます。

4. 使われる環境を確認する。 屋内か屋外か、人が触れるか、何で拭くか、何年使うか。ここで材料の選定が変わります。

5. 日程を見る。 金型や版が必要な方法は、着手から現物までが長くなります。

この順で絞ると、たいてい選択肢は1つか2つに収まります。迷いやすいのは3番の「質感を言葉にする」ところです。言葉だけでは伝わりきらないため、近い質感の現物を持っているなら、それを渡してしまうのが最も早い方法です。

よくある質問

Q. 試作は塗装、量産はめっきというように、途中で変えられますか。

質感が完全に一致するとは限らないため、注意が必要です。塗装とめっきでは反射の仕方が違います。量産での方法が決まっているなら、試作の段階からその方法に寄せた見え方で確認しておくほうが、後の食い違いが減ります。

Q. ひとつの製品に複数の加飾を組み合わせられますか。

できます。実際、面ごとに方法を変える製品は珍しくありません。ただし工程が増えるぶん、マスキングや順序の設計が必要になります。どこを何で仕上げるかを、早い段階で図に落としておくと進めやすくなります。

Q. 素材が決まっていない段階でも相談できますか。

できます。むしろ、素材と加飾は一緒に決めたほうが良い場合があります。塗装の乗りやすさは素材によって変わるため、仕上げの要求が厳しいほど、素材側で調整できる余地が効いてきます。

Q. 大きいものはどうすればよいですか。

装置の寸法に縛られない方法を選ぶことになります。塗装は対象の大きさに合わせて工程を組めるため、大型品で残りやすい選択肢です。分割してつくり、接いでから仕上げるという進め方もあります。

Q. 量産を見据えた試作はできますか。

エムズは、試作対応として1点からの小規模試作に加えて、量産に向けた塗装工程の策定支援を挙げています。1点つくって終わりではなく、その先の工程を見据えた相談ができます。

まとめ

加飾技術は、成形時・フィルム・めっき蒸着・塗装の4つに整理できます。選ぶ順序は、数量、形状、質感、環境、日程。この順で絞ると、選択肢はほとんど自動的に決まります。

数が少ないとき、形が複雑なとき、大きいときに残るのが塗装です。工数が大きいという弱点と引き換えに、形状と素材と数量の制約がほとんどありません。試作や一点ものの領域では、しばしば唯一の現実的な手段になります。

エムズでは、特殊塗装、銀鏡塗装、水圧転写といった塗装側の加飾を、素材を選ばず1点から承っています。どの方法が合うか決めきれない段階でも構いません。お問い合わせからご相談ください。

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